さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

若い人たちも、特許について、ちゃんと知ったほうが良いと思った日

はじめに

Twitterで特許関連の発言にコメントをするのは辞めましょう。危険です。

あまりにも私達が認識している内容と、一般の方との認識の差が大きすぎます。

彼らがあまりにも間違っていることを言っていても、我慢するのは大事です。

本当、反省します。

何故、Twitterから、わざわざBLOGにコメントを投下するの

本日、Twitterで絡んでしまった一部の方から、TwitterにReplyではなくて、わざわざブログのコメント欄に返事を投稿してくれる人が居ました。

こういうのは、とても面倒ですよ。やめましょうね。

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私はコロプラ社員でも、関係者でもありません。

製品開発を行っている、普通のサラリーマンです。

ゲーム関係の仕事もしていません。

製品開発という業務では、特許に対しては十分に注意を払って製品開発をする必要があります。そのため、日頃から、特許の検索をしたり、申請をしたりという業務をしなければなりません。

例えば、他社が特許を申請している技術に抵触する恐れのある仕様は回避する必要があります。どうしても、他社が申請している特許を利用しなければ製品が作れないと判断した場合には、パテント料を支払う必要があります。

上の投稿者の方は、「コロプラが特許申請した技術は、大元の所持者が・・・」「他社が開発した特許を自社の特許にするな」という発言をされています。

これに対してコメントする前に、特許って何?っていう話をさせてください。

私が製品開発という業務をしてきた中で理解している内容の範囲で説明します。

ですので、難しい話はできません。基本的な薄い内容のみです。

特許権って何?

特許権とは、商標権や実用新案権に並ぶ知的財産権の1つで、発明の独占的な実施を国に保証してもらえる権利です。
特許権にも実用新案権や商標権などと同じように、特許法という法律が定められており、この特許法には、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」と明記されています。
特許権の対象は、無体物たる発明(技術的思想)、つまり形のない知的財産であり、自分が使っている間は別の人は使えない、といった物理的な制約がありません。また、特許権を有する者は、その対象である発明を、自由に使用、収益、処分することができます。

特許権を取得することによる3つのメリット - JAZY国際特許事務所【公式】

特許を申請し、受理されると、公開されます。

公開された特許は、独占的な実施を国に保証してもらえます。

しかし、保証してもらえるかわりに、公開されてしまうのですから、その公開された技術を利用して、もっと良い発明をされるケースは十分にあります。現在の製品というのは、そういった連鎖の上で技術進歩を繰り返してきました。

Aさん:「発明」「特許・公開」

Bさん:「公開された特許を参照し、回避、且つさらに良い発明」「特許・公開」

Cさん:「公開された特許を参照し、回避、且つさらに良い発明」「特許・公開」

Dさん:「公開された特許を参照し、回避、且つさらに良い発明」「特許・公開」

 

そのため、すっごい発明をしたとしても、特許申請はせずに、ひっそりと技術を独占するケースもあります。その場合、実現手段は誰にもわからないのですから、安心ですね。

その後、どこか別の人が、たまたま偶然に同じようなことを実現した製品を発表したとします。その場合は、たまたま誰かも同じ様に新技術を閃いたのでしょう。もしくはスパイ?それなら初めから、独占的な実施を保証してもらうという意味で、特許申請しておけば良かった。と後悔することになります。

 

逆に、そのまま公開された特許を利用することも可能です。

しかし、その場合は特許の出願者は、独占することを保証されているのですから、利用するためには、利用料を請求することができます。

特許制度の問題点

特許というしくみは、良いことばかりではありません。

何でもかんでも、思いついたことを特許として申請ができてしまいます。当然、申請にはお金がかかりますので、そんなに簡単なことでは無いのですが、世の中には本当に「これのどこか特許性があるんだ?」と思われる内容も無数にあります。

実際に製品に使っていない技術や、今後使うことも無いような技術であっても、特許は申請することはできてしまいます。今は製品の仕様として考えていないけれど、いつの日かにと考えた場合、やはり特許を申請しておかなければ、どこか別の企業に特許を出されてしまう。そういうことを避ける意味があります。そして、自社の製品では使うことはなかったけれど、他社製品で特許に抵触してくれれば、使用量の請求ができる可能性もあり、博打的な意味合いで特許申請が常日頃行われているのです。

 

特許を審査する方は、法律の専門家ですが、その技術の専門家ではありませんので、正しい書き方がされていればOKになってしまうケースもあります。

実際、私の職場でも、特許申請すると奨励金がもらえたりする制度があり、「年に一人1件申請すること」みたいなことを会社から言われたりします。これは、私の職場だけで無く、どこの企業でも良くある光景です。そういう各社の企業努力も、意味があるかわからないような特許が乱立する状況つくっているかもしれません。

 

特許を申請して、受理されたからと言って、抵触した製品から利用料が必ずもらえるものでもありません。特許というのは「発明」なのですから、新規性、有効性をあらためて確認されます。特許として登録された後でも新規性、有効性が乏しいものは、裁判で無効にできてしまいます。

特許を申請したときは、革新的な内容だったとしても、今になってみれば誰にでも思いつくような状況に変化してしまうようなケースも、特許の有効性は非常に弱くなってしまいます。

しかも、わかりにくい文章で書かれた技術なので、登録者はそのつもりであっても、登録された内容を読んだ人が、別の解釈ができてしまうようなケースにおいても、無効になることもあります。

そのようなことを加味して、特許の抵触なのか、無効なのかというのを1件1件裁判で争われるわけです。

本当に、特許関連の裁判というのは面倒ですし、時間もお金もかかります。

 

特許を登録した後も、継続して登録した状況とするためには、さらにお金が必要です。

 ですから、定期的に見直しをして、既に有効性や新規性が弱くなっていると判断された登録済みの特許は、無駄にお金が必要になるだけですので、どんどん破棄していくものなのです。

 

世界最強の法務部門と言われる任天堂さんの場合

今、話題の任天堂さんが申請済みの特許でも同じです。

任天堂株式会社の特許登録一覧

いずれも、出願された特許を無断で使用してはいけません。

利用する場合は、特許利用料が発生します。無断で利用した場合は、特許侵害で訴えられます。

任天堂が特許申請している特許の中で、無断使用が認められているものは、無いと考えてください。

「侵害しているゲーム沢山あるじゃないか」って思う人、多いですが、訴訟はお金がかかります。訴訟するメリットがなければ訴えません。

小さな企業や個人が、侵害していることに対して、訴訟問題にならないのは、任天堂が訴えるメリットが無いからです。だから、特許侵害してOKではありません。

すごく誤解している人が多いのに驚きました。

訴えられる可能性のある企業というのは、いろいろな政治的な情勢も含めて判断されるので、大きな企業はリスク回避のために、確実に他社の特許に抵触しないように、常にパテントのチェックを行いながら製品開発をする必要があるのです。

 

任天堂、コロプラとの『白猫プロジェクト』を巡る訴訟で請求額引き上げ―49.5億から96.99億に増額 | インサイド

一応、上記の記事を引用すると

今回の件に対しコロプラは「当社のゲームが任天堂の特許権を侵害する事実は一切無いものと確信しており、その見解の正当性を主張していく方針」とコメント。訴訟当初の見通しを貫くと改めて示しています。

https://www.inside-games.jp/article/2021/04/21/131991.html

と申しております。本当かどうかは知りません。それは、別の話です。

 

特許3734820号

任天堂さんが出願した該当の特許で、出願日は、2006.3.16 となっています。

それ以外にも4件の特許の侵害で訴えられています。

 

news.yahoo.co.jp

news.yahoo.co.jp

特許庁が公開している原文を一度は見てみてください。

すっごくわかりにくいですよ。

「この程度のドキュメントの内容だったら理解できるだろ」って思った方は、特許関連の業務に才能がある方です。世界最強の任天堂法務部門の仲間入りができる貴重な人材かもしれませんので、ぜひ腕を磨いてください。

製品を開発する際は、任天堂さんが出願した特許だけではなくて、全国にある無数の出願済みの特許から、同じ内容が無いのかをしっかりと確認して、回避 or 使用量の支払い どちらかを検討する必要があります。

すっごく大変な作業なのです。

 

コロプラが可哀想だと思う理由

任天堂が初めて訴えをしたのは、2018年になります。

以下のサイトが時系列に並んでいて、わかりやすいです。

ipforce.jp

そして、その前年に、コロプラは「ぷにコン」の特許を申請します。

特開2017-12247(P2017-12247A)

ipforce.jp

内容を見ていただければ、わかりますが、独自の演出技法を必死に考えたと思われる。まさしく「ぷにコン」です。

これが、任天堂を怒らせたっていう表現をしている方がいるようですが、ちゃんと見ましょう。ただの「ぷにコン」です。

 

まぁ、こんなしょぼい特許で任天堂様がお怒りになるわけは無いでしょ。

別にいくらでも回避できるのですから、コロプラさんにしてみれば一生懸命考えたUIなのですから、第三者に簡単にパクってほしくは無いでしょう。

 

では、何故、2018年に任天堂はコロプラを特許侵害で訴え始めたのか?

任天堂の闇の部分ですので、触れてはいけないのです。

だから、コロプラは、可哀想。

任天堂が訴訟をした理由を勝手に想像するのは良くないけど・・・

任天堂は、コロプラさんが特許に力を入れている分野に参入したいと思っていて、邪魔だったのかな?

それとも・・・・

 

いつの時代も、やり方が「えぐい」ですよ。任天堂法務部は。

コロプラが新規領域の特許を沢山申請していることを悪いことのように発言する方も居ます。しかし、新規領域なんて、いつも同じようなことが起きるのですよ。

パソコンの世界だって、スマートフォンだって、カーナビゲーションでも。新しい製品が出始めたころは、世界中で特許の取り合いでした。出さなきゃ、出されるのですから、必死に特許申請するのはあたりまえなのです。

特許には有効期限もあるんですよ

特許には、有効期限があります。有効期限が切れた技術は皆のものとして自由に使えるようになるのです。個人的には、こういうことが、技術の進歩を遅らせる要因にもなっていると思います。

古いコロプラの出願特許を引っ張り出してきて、これが任天堂を怒らせた原因だ。という説もあるようですが、別にどれも回避しようと思えば回避できる内容でしたし、古すぎて、そろそろ特許の有効期間きれますよ。いまさら、そんなことでは任天堂法務部は、騒がないでしょう。 

 

 

本当に、特許の世界って、面倒ですよ。

皆さん、誤解の無いように、正しく理解して、立派な製品つくりを目指しましょう。

 

世界を変えたテレビゲーム戦争

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